さよならThinkPad
これまでずっと、ThinkPadを使ってきました。頑丈であること、安定して動作すること、余計なソフトウェアが入っていないこと、キーボードの打ちやすさが秀逸であること、といった点が魅力で、10年以上、いろいろな機種を使ってきました。ThinkPadといえばIBM(の大和研究所)というイメージで、Lenovoが買収してからも同じようなイメージを持っていました。
最後に使っていたのはThinkPad X1 Nano Gen1で、ThinkPad史上最軽量にもかかわらず、高いパフォーマンスを発揮することが売りのノートパソコンでした。実際、パフォーマンスは良好で、携帯のしやすさ、キーボードの打ちやすさから、よく持ち歩いて使う自分の使い方にマッチしていると感じました。
しかし、使っていて、気になる点も出てきました。ほとんどは無視できるような問題点なのですが、ひとつだけ無視できない問題点があります。
それは、熱設計の甘さです。電源に接続せず省電力モードで使用しているときは問題を生じないのですが、電源に接続して全力を出させると問題が生じてきます。大量のファイルを送受信するなど無線ネットワークの高負荷状態が長時間続いたり、外部ディスプレイをUSBで接続したりすると、本体温度がかなり高くなってくるのです。高くなるだけならばいいのですが、ある瞬間でフリーズしたり、ブルースクリーンを出したりします。そして、分かるような予兆はありません。冷却ファンが頑張っているな〜と思っていると、反応がなくなっています。
最近のThinkPadは、性能の方を追い求めて安定性を疎かにしているような感じで、性能と安定性のバランスが崩れているような印象を受けます。ThinkPad X1 Nanoの前にはThinkPad X1 Carbonを使っていたのですが、Nanoほどではないものの、排熱の問題が発生していました。
このように排熱問題が付きまとうようになったThinkPadは、もはや安定して使用することができるとはいえないため、見切りをつけることにしました。キーボードの打ちやすさは一番気に入っていたのですが、熱暴走の危険と隣り合わせでは、信頼して使い続けることができません。
さようなら、ThinkPad!
ようこそMacBook Air
そこで次に選んだのは、M2チップ搭載のMacBook Airでした。
MacBook Airは意外と使いやすい、という評判を目にしており、ずっと気になっていました。MacBook Proの方が高性能ですが、文書作成などが主要な使い方なので、MacBook Airでも問題ありません。MacBook Proに使われているチップはM2 ProでM2の2倍のトランジスタ量ですが、倍化している大半はGPUコアです。M2でもCPUコアは8個搭載しているので、グラフィックや機械学習を使うのでもなければ(しかも機械学習分野ではまだM2のサポートは進んでいない)、まったく問題ないはずです。
ハードウェアだけでなく、macOSというソフトウェアにも興味がありました。iPhoneとiPadを使っているので、iCloudを使ったアプリケーションはリアルタイムで情報を同期させることができ、Windowsが混在した環境よりも利便性は増すと思われます。Windowsでは、iPadでデータをNASに書き出してから読み出さなければならないので、一手間がかかってしまいます。また、macOSならばiPadと同じアプリを使って作業することができる場合もあり、そのときはデータの受け渡しをすること自体が必要なくなります。
また、UNIXなのでシステムの信頼性も高く、MacというハードウェアとmacOSというソフトウェアが同じ企業で作られているので、Windows環境とは比較にならない最適化が施されていると予想されます。
以上のように、興味が尽きなかったので、これを機にmacOSを試してみることにしました。
ここで不安になるのは「これまで10年近くWindowsを使ってきたのに、それを突然macOSに乗り換えたら、これまでできたことができなくなってしまうのではないか?」という点です。
結論から言うと、全く問題ありません。乗り換えるための準備は必要でしたが、それが終われば、何の支障もなく、macOSの環境に移ることができました。
以下では、Windows環境からmacOS環境へ移行する場合に対処しなければならない点を挙げ、その内容について説明していきます。
データの移行
業務では文書や画像など、様々なデータを作成したり、受け取ったりします。Windowsで使っていた業務上の各種データをmacOSに移さなければ、まだ処理が終わっていない業務を続けることができなくなってしまいます。
これについては、以下のような方法が考えられます。
- USBメモリーやUSBハードディスクにWindowsのデータをコピーし、それらの媒体からmacOSにコピーする。
- WindowsとmacOSをネットワークに接続し、ファイル共有を使ってコピーする。
何らかの方法を使って、データをWindowsからmacOSにコピーすればよいわけです。
私はネットワークストレージ(NAS)を使っているので、業務データは全てNASに保存してあり、データをコピーする必要はありませんでした。
ここに関しては、より作業しやすい環境を作るために工夫が必要な点もあったため、別の記事で詳しく紹介しようと思っています。
Microsoft Office
ほとんどの同業者は、文書作成や表の作成をするために、Microsoft Officeを使っていると思います。
私はMicrosoft 365のサブスクリプションを購入しているので、ポータルからアプリをダウンロードしてインストールするだけで導入が完了しました。
アプリケーションごとの設定は再度しなければなりませんが、それは新しいWindowsマシンを購入したときも同じです。
日本語入力
私は以前からATOKを使っています。何が良いのか、と言われると、具体的には分からないのですが。MS IMEやGoogle日本語入力でも問題ありませんが、日本企業が作っていることもあり、応援の意味も込めて愛用しています。
そんなATOKですが、ATOK Passportというサブスクリプションがあります。ベーシックとプレミアムという2コースがあり、プレミアムは広辞苑などのオンライン辞書が使えたり、登録単語が多かったりします。ベーシックは一部の機能を使えませんが、月額税込330円という低価格です。通常の用途であれば、ベーシックで十分かな、と思います。
そして、ATOKにはmacOS版も存在します。そのため、ATOKのサブスクリプションを登録したJUSTアカウントがあれば、あっという間にWindowsと同じ日本語入力環境を作り出すことができます。
プログラミング環境
通常業務でRubyやPythonなどのスクリプト言語を使うことも多いと思います。(え?)
これらのソフトウェアはUNIX環境で作られていることが多いため、Windowsで使おうとすると、専用にビルドされたパッケージを探す必要がありました。ほとんどは公式ページで提供されていますが、Rubyのように、ユーザーコミュニティに丸投げしているところもあります。
macOSでは、Homebrewを使えば、すぐにインストールすることができます。
もっとも、Windowsでも、Chocolateyを使えば、すぐにインストールすることができるのですけれども。
Appleはすごかった
ここまで書いてきたように、Windows環境からmacOS環境への移行は、それほど大変なものではありません。
そして、移行して感じたのですが、macOSはWindowsに比べて圧倒的に軽く、あらゆる作業のレスポンスが良好で快適です。また、MacBook Airはファンレス構造なので動作音がありません。排熱が問題になるかと思いきや、外部ディスプレイを使っても全く発熱しません。(発熱に関してはWindows環境の問題と言うよりThinkPadの問題と言うべきかもしれませんが。)
標準のファイル管理アプリであるFinderはシンプルで使いやすく、必要な機能は全て備えています。リマインダーやカレンダーはiPhoneとリアルタイムで同期されるため、仕事の管理もしやすくなりました。
また、macOSは自動化と相性が良く、様々な工夫ができそうに見えます。
まだ使いこなせていない部分もたくさんあるので、今後、いろいろ探究していこうと思います。
ハードウェアも作りがしっかりしていて、意外とキーボードが打ちやすいです。ストロークは浅いのですが、構造がしっかりしており、ちゃんと打ち込んだ感覚が残ります。筐体の頑丈さもすさまじく、ちょっとやそっとのことではびくともしない硬さです。完全ファンレスなので、ホコリの心配もありません。内蔵スピーカーも音が良いです。この辺り、流石はAppleだな、と感心します。