Amazon.co.jp / 綾辻行人「黒猫館の殺人」

館シリーズ第6作目。

記憶喪失の人物が、自分が書いたという手記を頼りに、その手記に書かれた事件の舞台となった館を探してくれと頼むところから話が始まります。

記憶喪失なので、自分が書いたというにもかかわらず、内容に覚えがないという奇妙なシチュエーションです。いろいろなところに伏線が張られており、最後に「そうだったのか!」と繋がっていく構成は見事です。

記憶喪失の人物が誰なのかは比較的早くに勘付くと思うのですが、解かなければならない謎が二重三重に張り巡らされていて、一筋縄ではいきません。

今作は事件に巻き込まれない登場人物が少しだけ多く、世界の広がりを感じさせてくれます。「体育館の殺人」などが顕著なのですが、登場人物どうしの、事件そのものに関係しない繋がりは、物語の世界に広がりや深みを与えるものだと感じています。多く登場させると話を破綻させかねないので、さじ加減が難しいところなのでしょうが。

物語中、小さな子供が犠牲になります。創作だとは分かっていますが、少しいたたまれない気持ちになりますね。