弁護士会ではオンラインで研修を視聴できるようになっており、目についたDVに関する研修を聴いていました。

そこでは、被害者対応をしている精神科医が講義をしていたのですが、その中で、裁判所が保護命令を出すまでの期間が長くなっていることに触れていました。被害者にとっては、迅速に保護命令を出してもらうことが重要なのに、だんだんと時間がかかるようになっていることや、相手方が抗告をするなどして迅速さが失われているというようなことを話しているように感じました。

しかし、それを裁判所に求めるのは間違っているのではないか、と感じています。

裁判所は証拠に基づき、加害者被害者いずれの人権も考慮した上で法を適用する司法機関です。そのため、あいまいな証拠に基づいて判断したり、相手方の意見を十分に聴かずに判断するようなことがあってはならないと思います。

そのため、要緊急性の高い保護命令とはいえ、時間がかかるのは当然ではないか、それをもっと短くしろというのは司法の役割を無視していることになるのではないかと考えるのです。

仮処分という制度では、損害賠償に備えた担保を収めることで、迅速な処分を得ることができます。保護命令でも同様の仕組みを作り、担保が用意できないDV被害者には、寄付などを使って支援する制度を民間で作ればよいのではないでしょうか。

このようなことを言うと、被害者のことにもっと配慮しろだとか、寄り添えと言われるかもしれません。しかし、利用者のモラルがしっかりしていて、理想通りに利用されるのであれば、寄付を行うことは社会的信用に繋がると判断されて、寄付を行う企業なども増えるはずです。そして、問題なく運用されるはずです。

一方、制度を悪用するようなことが増えれば、この社会ではそのような制度を運用できるほど成熟していないと判断できるので、別の意味で手を考えなければなりません。

現在の制度そのものの限界を考えた上で、何ができるのか、そして必要であれば、制度そのものの作り直しを考えなければならないと思います。

私自身は、法の解釈で解決する方法は好きではなく、法には解釈の余地などあってはならないと考えています。そのため、このような考え方に行き着きます。しかし、現在の法律はそのようなつくりになっておらず、司法に一定程度の範囲で適用が委ねられています。そのため、現在の運用をどう行っていくのかを考えることには意義があり、精神科医の言い分が間違っているわけではありません。ただ、私の好みに合わない、というだけです。