株式会社ジャニーズ事務所の代表取締役社長であったジャニー喜多川氏が性加害を繰り返していた件について、多くの企業が広告でジャニーズ事務所との関係を見直すという報道がなされています。報道などで企業の言い分を見たところ、どうにも気になるところがあったので、書いておきたいと思います。

各社のホームページを見ても、特にプレスリリースとして掲載されてはいないのですが、日本マクドナルド株式会社アサヒグループホールディングス株式会社日本航空株式会社など、名だたる多数の大企業が広告契約の打ち切りを表明しています。警察庁など、いくつかの組織・企業は、ジャニーズ事務所所属のタレント個人と契約をしているということで、そのまま広告に起用するというところもあるようです。現時点では態度を明らかにしていない企業も多く、全体的には、世間の反応を見て決めようと考えているように思われます。

ジャニーズ事務所は「外部専門家による再発防止特別チームに関する調査結果について」というページで調査報告書を一般に公開しており、報道番組などで紹介されている以上に踏み込んだ内容が書かれています(そう見えます)。芸能業界一般における話にまで踏み込んでいるのに、そこまで紹介した報道番組は見たことがありません・・・と書けるほど多くの番組をチェックしたわけではないのですが、自分が見た範囲では話題にはなっていませんでした。報道機関の責任については触れているのですが、芸能界において同じような問題があるのではないか、その追及をしなければならないのではないか、という話は誰もしていないように感じられます。

個人的な感想ですが、企業が「ジャニーズ事務所は人権軽視が甚だしいので、具体的な防止策や救済方法が出てくるまで取引できない」と言うのは、どうにも胡散臭く見えてしまいます。最近はARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONをプレイしていているので、企業というものに対する見方が歪んでしまっているのかもしれませんが・・・。(旧作では大破壊により国家が消滅して企業だけが残った、という設定で、私たちの世界の「企業」と同列に語ることはできないかもしれません。AC6でも同じような設定なのか明言されていませんが、国家に言及する登場人物が皆無なので、国家の影響が無くなっている世界であるとは思われます。)

人権の重みは人によって異なっており、絶対不変のものではありません。人権を軽視しているかどうかは、ある民間企業が決めるようなことではなく、口を出すようなものでもないと思います。素直に、「ジャニーズ事務所は社会的な問題を引き起こしており、同事務所に所属するタレントを使った場合、社会的評価が落ちる可能性があるので使いません」と言うことはできないにしても、「ジャニーズ事務所は我が社の顔として相応しくありません」と言ってしまえば良いのではないかと思います。そもそも、企業(株式会社)は利益の追求が存在価値であり、その中で人権との対立は必ず生じてくるものなので、人権擁護という言葉を安易に使うと、自分の首を絞めることになってしまうことでしょう。そんなことは気にしていないのかもしれないし、気にする人も少ないのかもしれませんが。

事務所に責任があるとしても、所属タレントに責任は無いだろう、という意見も聞きますが、連想してしまう以上、切り離して考えることはできないと思われます。法的責任もありませんし、道義的責任もありませんが、いまの社会は、そのように割り切って考えられる人ばかりではないようです。ただ、世間が最初からそのように考えていたのか、それとも、報道を見て世論が誘導されたのかは分かりません。

ともかく、人権擁護という企業の言い分は、本当にそう考えているのか? と突っ込んでしまいたくなります。どこかで、サービス残業を強制して人権を無視している人たちが人権擁護などと言っていて耳を疑った、という話を見かけましたが、笑い話にはできないと思うのですよね。