Amazon.co.jp / 喫煙文化研究所「たばこはそんなに悪いのか」
たばこのパッケージには「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。」などと書かれています。これはたばこの製造元・販売元が自分で書いているのではなく、法律に基づいて書くことになっています。
一般的に、たばこは肺ガンの原因になる、と言われていますが、本当にそうなのでしょうか。それについて書かれているのが、この書籍です。
確かに、健康に関する統計データは、どこまで信用できるのか、明確ではないところがあります。原因とする事象から結果となる事象がごく短時間に発生するのであれば、想定外の要因が入り込んだり、未知の反応が生じる余地が少ないので、因果関係を強く推定することができます。しかし、数年や数十年にわたって行われた追跡調査に関しては、結果となる事象が、いったいどの原因から生じているのか分からないという問題があります。また、調査対象となっている人物の生活すべてを追跡することは非現実ですし、それらの人物が正直に回答しているのか担保もありません。そうなると、実験をする人の目的に適合したデータだけを抽出してしまう可能性があり、原因と結果の因果関係に対する信用性は失われてしまいます。
たばこはタールやニコチンが含まれた煙を肺の中に入れるので、身体に良いものではないのだろうな、という感覚は抱いていました。しかし、どれくらい悪いのかと言われれば、よく分からない。最近の世間は喫煙者にかなり厳しく当たっていますが、それが本当に正しいのかと問われれば、確かに、疑問を差し挟む余地はあるように感じます。
私はたばこが嫌いなのですが、この本を読めば考えが改まるのかなと思って、図書館で借りて読んでみることにしました。
私がたばこを嫌いな最大の理由は「におい」です。
書籍では、たばこは精神を落ち着かせるリラックス効果があるだとか、コミュニケーションを円滑に進めるための材料になるのだとか、たばこを吸うことのメリットも書かれていました。しかし、それらは、たばこを吸う人にとってのメリットです。周りの人のメリットではありません。
たばこが周りの人に与える影響として副流煙があります。副流煙も喫煙と同じ健康上のリスクがあるのだという話ですが、そもそも喫煙そのものの健康リスクが(科学的には)明確ではないので、副流煙が周りの人に健康上のリスクを与えるのかは分かりません。まあ、良い効果があるとは考えられませんが。
しかし、たばこのにおいは確実に存在します。そして、私はたばこのにおいが嫌いです。香水のにおいも嫌いなので、強いにおいに弱い体質なのだろうと思います。においに関する好き嫌いは、どうやっても、譲ることはできません。どうしても我慢ができないのですよね。
この書籍を読んでも、たばこのにおいが気になるものではないというような話はなく、逆に、においの問題は解決が難しいと書いてあり、私のたばこに対する感情を変えることはできませんでした。
また、たばこが嫌いな次の理由は「価格」です。
自分自身がたばこの値段の問題に悩まされているわけではないのですが、仕事柄、依頼者の家計表をチェックすることが多くあります。そして、月々のたばこ代金に驚かされるのです。えっ、この収入で、こんなにたばこを買ってるの? と驚くことが何度もありました。趣味の一環でもあり、別に否定するわけではないのですが、たばこがあるおかげで、経済的な苦しさに喘いでしまう人が出てきてしまうのではないかな、と思ってしまいます。
これはたばこそのものが悪いわけではなく、たばこが税金のドル箱だと位置づけてしまっている日本社会が悪いのだとは分かっていますが、だからといってたばこを許す気分にはなれません。
ほかにも、たばこを吸っている人が「たばこ休憩」と言って喫煙室に行ってしまい、仕事を怠けてしまっているという文句をよく聞きます。非喫煙者からすると、自分が飲み物などを飲んで休憩していると注意されるのに、喫煙者が喫煙室でたばこを吸っているのは注意されないので不公平だ、というわけです。
書籍では、喫煙所でのコミュニケーションから新たな着想や仕事が生まれると言ったようなことも書かれていましたが、それこそ、全体から都合の良い一部分だけを切り出しているもので、本気でその効用を示したいのであれば、たばこ休憩に行った場合と行かなかった場合の利益改善率を算出して比較しなければなりません。しかし、そのような記述はありませんでした。まあ、そもそも、どうやってデータを計測するんだという話もあるわけですが。そのため、非喫煙者の憤りを解消するようなことは書かれていないと言わざるを得ません。
そんなわけで、この書籍は、たばこが肺ガンなどの原因になると因果関係を認めるのは、何者かの作為的なものであって、科学的な検証に基づくものではないのだという主張においては、「たばこはそんなに悪いのか」と疑問を差し挟めるものなのですが、その他の要因については、何の解決にもならないものでした。しかし、世の中で広く言われている事柄に対して疑問を持つきっかけになり得るので、そのような意味においては、意義のある書籍だと思います。