人形というと、和服を着た長い黒髪の日本人形をイメージするかもしれませんが、この作品に登場する人形は、等身大のマネキン人形です。館のあちこちに置いてあり、頭が無かったり、腕が無かったり、みんなどこかが欠けています。いったい何のために置かれたものなのか、そもそも何かの意味があるのか、物語の中で明らかになっていきます。
これまでの作品と雰囲気が大きく変わり、ミステリーっぽさが少ない異色作です。ひとりの人物の内面に注目して話が進んでいくので、感情移入しやすかったと感じました。
話の途中で館が火事に見舞われ、えらいことになります。ここで職業柄気になるのは、この館や持ち主は、火災保険に入っていたのだろうか、ということです。正確には記憶していないのですが、平成になったくらいの話だったはずです。その頃の保険商品はどんなものだったのかな、と。あの火事で保険金出るのかな、などと考えてしまいました。主人公の設定上、その辺りの財産的な心配は必要無いような、良いご身分だったのですが。