遺言とは,一般的な意味では,亡くなった方が生前に遺した言葉のことです。
しかし,法律上は,民法で規定された方式に従って作成された書類のことになります。注意しなければならないのは,方式に従っていない場合は,内容を議論する以前に,そもそも遺言として扱われないということです。
日本の民法は,三つの形式を定めています。(民法967条)
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
場合に応じて,どの遺言(書)を作成するか,適切に選択しなければなりません。
また,遺言によって何でもできるというわけではありません。大きく次の4種類に分けられます。
- 相続の法定事項の修正に関する事項
- 推定相続人の廃除,排除の取消し(民法893条,894条2項)
- 祖先の祭祀主宰者の指定(民法897条1項)
- 相続分の指定(民法902条)
- 特別受益の持戻しの免除(民法903条3項)
- 遺産分割方法の指定(民法908条)
- 遺産分割の(一定期間の)禁止(民法908条)
- 遺産分割における担保責任に関する別段の定め(民法914条)
- 遺贈の減殺方法に関する別段の意思表示(民法1034条)
- 相続以外の財産処分に関する事項
- 遺贈(民法964条)
- 相続財産に属しない権利の遺贈について別段の意思表示(民法996条,997条2項)
- 財団法人設立のための寄附行為(法158条2項)
- 信託の設定(法3条2号)
- 生命保険金の受取人の変更(法44条)
- 身分関係に関する事項
- 認知(民法781条2項)
- 未成年後見人の指定(民法839条1項)
- 未成年後見監督人の指定(民法848条)
- 遺言の執行に関する事項
- 遺言執行者の指定(民法1006条1項)
(参考:高岡信男(2014). 争続・遺言の法律相談<第1次改訂版>,学陽書房)