刑事事件で,外国人の弁護人となることがありました。
 その被告人は,自国で政治的な混乱に巻き込まれ,日本に行かざるをえなかった(自国に留まっていては危険だった)という主張をしていました。
 情状に関わる事実関係なので,弁護人としては,そのような事件が現実に発生しており,自国に留まっていては危険であったという立証をしたいと考えます。
(それくらい危ないのならば難民として申請した方が良いのではないかという話もありますが,難民申請もそう簡単には通りません。)
 そこで困ってしまうのは,いったいどうやって自国における状況を立証するのか? ということです。

 政治的な事件であれば,当時の新聞記事(インターネット上の記事でも問題ないと思います)を持ってくれば足ります。さすがに,これに不同意する検察官はいないでしょう。
 しかし,それで立証できるのは,事件があったことだけです。
 その事件によって,国民生活がどのように変化し,どのような混乱が生じたのか,さらに立証をしなければなりません。
 まず考えられるのは,インターネット上の新聞記事です(探すのも楽)。しかし,いくら新聞記事といっても,世界中の小さな国々すべてについて書かれているわけではありません。
 個人が作っているニュースサイトも助けになりますが,信用性の部分に問題があります。生活ぶりや,雰囲気というものは,記事を執筆する人の主観が大きく反映されます。そのため,証拠として提出をしても,検察官が不同意とする可能性がとても高くなります(特に,被告人に有利なものは不同意とされます。なお,関係がなければ,裁判所が証拠採用してくれません。)
 通訳人に事情を聞くという手もありますが,通訳人も千差万別で,しばらく帰国していない人もいれば,住んでいる地方が違って事情が分からないという人もいます。また,事情を話してくれたとしても,それをどうやって証拠として提出するのか,という問題もあります。

 現地に入ってリサーチをし,その調査報告書を提出するという方法が一番なのかもしれませんが,そのコストを誰が出すのか,などの問題が山積しており,とても非現実的です。
 となると,あとは被告人質問で本人に聞くしかないということになります。可能な限り,客観的な事実を聞き出し,それに該当するようなニュース記事を探すしかないように思います。