この問題の概要は,「日本学術会議の任命拒否」というWikipedia項目を参照してもらえればと思います。

内閣総理大臣の任命拒否行為が違法だ,との意見が多く見られます。千葉県弁護士会も,任命拒否に抗議する会長声明を出しています。

個人的には,違法なのかと言われれば違法ではないが,適切なのかと言われれば適切ではない,という意見です。

よく見るのは「学問の自由の侵害だ」という意見です。しかし,学問の自由というのは,研究や探求を政府から(公共の福祉に反しない限り)制限されることがないという,精神的自由に属する人権です。任命拒否をすると,研究ができなくなるのか,というと,そのようなことはありません。研究予算に影響するとか,名誉が傷つくというような意見もあるかもしれませんが,本当に学問を志す者であれば,それは関係ないはずです。予算が付かないのであれば別の手段で用意することを考えるべきですし,名誉は研究結果によって獲得するものでしょう。

人権に対する具体的侵害があったのか,といえば,無いと思います。抽象的には侵害されたと主張することができるかと思いますけれども,違法・違憲と裁判所が認める程度の侵害にはなりえないと思います。

しかし,何の理由も示さずに拒否したのは明らかな悪手です。会議の方向性が偏って公平性に疑義があるとか,会議の目的に沿った何らかの理由を示すべきだったでしょう。これが示せないのであれば,恣意的に拒否したと言われても仕方がありません。

個人的な疑問として,内閣には法律の専門家も集まっているのですから,そのような理由を示すことは容易なはずです。それにも関わらず,何も示さないというのは,何らかの訳の分からない意図が隠されているのではないかと勘繰ってしまいます。理由を示さないこと自体に,何らかの意味があるのかもしれません。

もしかすると,本当に単純に,そんなところまで頭が回らなかっただけなのかもしれませんが・・・。