とある刑事事件において,依頼者から「刑務所からは近い親族にしか手紙を送れませんよ」と言われたことがありました。はて,そんな制限はあったっけ? 制限されているとすれば,基本的人権の侵害なのではないか? どのような運用になっているか,そういえば知らないなぁ…。

 考えてみると,大抵の弁護士は,刑務所に入るまでのことについては詳しくても,刑務所に入ってしまった後のことについてはそれほど詳しくないのではないでしょうか。研修などで刑務所を見学したりしているので,一般の方々に比べれば詳しいでしょうけれども,これから刑務所に入る方々に中での生活をレクチャーできるほど詳しい弁護士というのは珍しいのではないかと思います。

 そんなわけで,受刑者の処遇は現在どのようになっているのか,いろいろと調べて勉強してみたいと思います。

 なお,ここに書かれている内容と,実際の刑務所における運用は,異なっている場合があります。もしかすると,刑務所によって運用方針が違っているかもしれませんので,実際に何かをしようとする場合には,事前に刑務所などに問い合わせるようにしてください。

根拠法

 刑務所は国の機関ですから,何らかの根拠法があるはずです。

 以前は,「監獄法や刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律」が根拠法となっていましたが,現在では,平成18年(2006年)に成立した「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」が根拠法になっています。

 全文はe-Gov法令検索で見ることができます(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律)。

 法律の制定経緯や,以前に比べての変更点などは,ここで細かく説明するものでもありませんので,さっそく中身を見ていきましょう。

手紙のやりとり

 まずは,最初に取り上げた,手紙について見てみます。

(発受を許す信書)
第百二十六条 刑事施設の長は、受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。以下この目において同じ。)に対し、この目、第百四十八条第三項又は次節の規定により禁止される場合を除き、他の者との間で信書を発受することを許すものとする。

(信書の発受の禁止)
第百二十八条 刑事施設の長は、犯罪性のある者その他受刑者が信書を発受することにより、刑事施設の規律及び秩序を害し、又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者(受刑者の親族を除く。)については、受刑者がその者との間で信書を発受することを禁止することができる。ただし、婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の受刑者の身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため信書を発受する場合は、この限りでない。

(信書の内容による差止め等)
第百二十九条 刑事施設の長は、第百二十七条の規定による検査の結果、受刑者が発受する信書について、その全部又は一部が次の各号のいずれかに該当する場合には、その発受を差し止め、又はその該当箇所を削除し、若しくは抹消することができる。同条第二項各号に掲げる信書について、これらの信書に該当することを確認する過程においてその全部又は一部が次の各号のいずれかに該当することが判明した場合も、同様とする。
 一 暗号の使用その他の理由によって、刑事施設の職員が理解できない内容のものであるとき。
 二 発受によって、刑罰法令に触れることとなり、又は刑罰法令に触れる結果を生ずるおそれがあるとき。
 三 発受によって、刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。
 四 威迫にわたる記述又は明らかな虚偽の記述があるため、受信者を著しく不安にさせ、又は受信者に損害を被らせるおそれがあるとき。
 五 受信者を著しく侮辱する記述があるとき。
 六 発受によって、受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき。
2 (略)

(信書に関する制限)
第百三十条 刑事施設の長は、法務省令で定めるところにより、受刑者が発する信書の作成要領、その発信の申請の日及び時間帯、受刑者が発信を申請する信書の通数並びに受刑者の信書の発受の方法について、刑事施設の管理運営上必要な制限をすることができる。
2 前項の規定により受刑者が発信を申請する信書の通数について制限をするときは、その通数は、一月につき四通を下回ってはならない。

 基本的には,誰との間でも,信書(手紙)のやりとりをすることはできるということになります(親族にしか送ることができないというのは以前の制度における話だと思われます)。ただし,刑務所の目的(受刑者の更生)に反するような場合には禁止されます。また,月ごとに回数制限がかけられている点にも注意が必要です。

面会

 次は,面会について見てみます。

(面会の相手方)
第百十一条 刑事施設の長は、受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。以下この目において同じ。)に対し、次に掲げる者から面会の申出があったときは、第百四十八条第三項又は次節の規定により禁止される場合を除き、これを許すものとする。
 一 受刑者の親族
 二 婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の受刑者の身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため面会することが必要な者
 三 受刑者の更生保護に関係のある者、受刑者の釈放後にこれを雇用しようとする者その他の面会により受刑者の改善更生に資すると認められる者
2 刑事施設の長は、受刑者に対し、前項各号に掲げる者以外の者から面会の申出があった場合において、その者との交友関係の維持その他面会することを必要とする事情があり、かつ、面会により、刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ、又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認めるときは、これを許すことができる。

(面会に関する制限)
第百十四条 刑事施設の長は、受刑者の面会に関し、法務省令で定めるところにより、面会の相手方の人数、面会の場所、日及び時間帯、面会の時間及び回数その他面会の態様について、刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができる。
2 前項の規定により面会の回数について制限をするときは、その回数は、一月につき二回を下回ってはならない。

 面会については,誰でもオッケーというわけにはいかないようで,親族や法的手続上面会が必要な人以外では,受刑者の改善更生に役立つ人が基本になります。こちらも月あたりの回数制限がありますので,注意しなければなりません。また,いつでも会えるというわけではないので,面会に行く場合は事前に面会可能な時間帯の確認をしておいた方が良いでしょう。多くの刑務所では,午前中から夕方(午後4時か5時)になっているはずです。他の方々が面会をしていると待たされることもありますので,早め(午前中か午後1時ころ)に行くといいでしょう。ちなみに,警察署では夜中や早朝でも弁護士であれば接見させてくれますが,刑務所は融通が利かないので接見させてくれません。刑務所で被告人と接見するような場合は,行く時間に気をつけましょう。

差入れ

 刑務所内には,差入れをすることができます。しかし,何でも持ち込めるというわけではなく,かなり厳しい制限があります。

(金品の検査)
第四十四条 刑事施設の職員は、次に掲げる金品について、検査を行うことができる。
(略)
 三 被収容者に交付するため当該被収容者以外の者が刑事施設に持参し、又は送付した現金及び物品

(物品の引渡し及び領置)
第四十七条 次に掲げる物品のうち、この法律の規定により被収容者が使用し、又は摂取することができるものは、被収容者に引き渡す。
 一 (略)
 二 第四十四条第三号に掲げる物品であって、前条第一項各号のいずれにも該当しないもの(被収容者が交付を受けることを拒んだ物品を除く。)
2 (略)

(差入れ等に関する制限)
第五十一条 刑事施設の長は、この節に定めるもののほか、法務省令で定めるところにより、差入人による被収容者に対する金品の交付及び被収容者による自弁物品等の購入について、刑事施設の管理運営上必要な制限をすることができる。

 持ち込める物品や数量は,刑務所によって異なります。実際に差入れをしようとする場合は,必ず,事前に刑務所に確認するようにしてください。

 ここでは,一般的であると思われる基準について述べておきます。あくまでも個人的な記録にすぎませんので,実際と違っていても,刑務所の職員に「ここに書いてあるんだけど!」などと抗議しないようにしてください。

  • 受刑者について,衣類の差入れは不可。受刑者は,みんな決まった服を着るためだと思われます。
  • 長いひもが付いているものは不可。自殺防止のためだそうです。よくあるのが,ズボンやパンツ(腰で締めるためのひも),パーカー(あごで締めるためのひも)などです。もっとも,事前にひもを切ってしまっておけば大丈夫です。
  • 食品類は不可。代わりに,お金を差し入れて,自分で買ってもらうようにします。
  • 先の尖ったものは不可。武器になりかねないためだと思います。ボールペンなどは,指定されたものしか差し入れられないようです。
  • (以下,順次追加していきます。)

 現金については,金額の制限はありますが,差入れを拒否されるようなことは普通ありません。外で購入して差し入れるよりも,現金を差し入れて,刑務者本人に刑務所内で必要なものを購入してもらった方がいいかもしれませんね。

 差入れも,いつでもできるというわけではなく,時間制限があります。面会時間と同じくらいですが,面会後に差入れをすることが多いので,なるべく早めに行った方がいいと思います。