いろいろな被疑者や被告人と話をしてきましたが,すぐに外に出ることができる(釈放される)と考えている人がとてもたくさんいます。
甘い。甘すぎる!
日本の刑事制度は,身柄拘束について,とても「おおらか」です。それが良いか悪いかは別として,ここでは,一度身柄拘束をされてしまうと,そこから抜け出すのがいかに難しいかということを書こうと思います。
逮捕以降の手続
刑事事件は,次のような順序で進んでいきます。
- 事件発覚(110番通報など)
- 逮捕
- 検察官送致(いわゆる「送検」)
- 勾留
- 起訴
- 刑事裁判(公判)
- 判決
犯人と疑われている人(これを「被疑者」といいます。)は,逮捕されてから判決が出るまで,ずっと身柄を拘束される可能性があります。身柄拘束というのは,警察などの留置施設に閉じ込められて外に出られなくなることです。その期間は,短くて2か月程度。裁判が長引いてしまうと,年単位になることもあります。
これは,とても困ります。会社に勤めている人であれば,身柄が拘束されている間は出社できません。家庭に子どもがいる人であれば,身柄が拘束されている間は子どもの世話をしたり成長を見守ることもできません。学生であれば,身柄が拘束されている間は学校に行けず,授業の進度から取り残されてしまいます。
まだ裁判が終わっておらず,犯人であることが確定していないのですから,どうしても必要な場合には,外に出られると考えるかもしれません。たとえば,自分しか処理できない重要な仕事がある,親族が田舎から上京してくる,学校の期末試験があり出席しないと単位を落として留年してしまう,など,ちょっと考えただけで色々なことが思いつきます。しかし,ほぼ確実に,一時的にでも,釈放は認められないのが現実です。仕事はできないまま時間は過ぎてしまいますし,上京してきた親族は家に入れず立ち尽くしてしまいますし,試験には出席できず留年してしまいます。そして,基本的に,これらの補償を受けることはできません。警察や検察は,まったく責任を負わないのです。
これが良いのか悪いのかは,ここでは議論しません。
ただ,知っておいてほしいのは,「捜査機関は甘くない」ということです。罪を認めているのだから,たいした被害が出ていないのだから,とても反省しているのだから,すぐに出られるだろう,という考えは通用しません。
いまの日本は,犯罪者だけでなく,犯罪者と疑われた人に対しても,とても厳しい社会です。
犯罪について,軽く考えないでください。
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