相続は,被相続人の死亡によって開始します(民法882条)。相続が開始すると,相続人は相続財産を法定相続分に従って相続します(民法896条,900条)。しかし,遺言がないような場合などには,相続人が話し合って相続財産を分けること(遺産分割)もできます(民法907条)。遺産分割を行うと,相続が開始したときから,決めた内容で相続財産が分けられていたことになります(民法909条)。

 再び,磯野家に登場してもらいましょう。
 波平さんが土地建物を単独所有していたとします。このとき,不動産登記の権利部(甲区)には,波平さんが所有権保存の登記をしたことが記載されます。
 ここで,波平さんが亡くなり,法定相続分に従って相続が行われたとします。このとき,不動産の所有者が変わって,フネさんとサザエさんたちの共有となります。フネさんたちは,それぞれが共有者である旨の変更登記をしなければなりません。
 さらに,フネさんの単独所有とする遺産分割が行われたとします。このとき,事実上は,フネさんやサザエさんたちの共有を経て,フネさんの単独所有になるのですが,法律上は,相続開始時にさかのぼって遺産分割の結果が生じるので,いきなりフネさんの単独所有になります。そのため,フネさんは,自分が所有者である旨の変更登記をしなければなりません。

 しかし,フネさんは,法務局に行って「所有権移転の登記をしてください」と言っても,そのまま認められるわけではありません。登記官は,波平さんが亡くなったことも知りませんし,その相続人がフネさんやサザエさんたちであることも知りませんし,遺産分割が行われたことも知りません。
 そのため,これまでに説明した戸籍謄本を示すほか,遺産分割が行われたことを証明するものを示さなければなりません。
 遺産分割を証明するものとして,遺産分割協議書というものがあります。
 これは,相続財産のそれぞれについて,誰がどれだけ取っていくのか,ということを明らかにするものです。内容の書式については,インターネットで検索すれば,いろいろなものを見つけることができるはずです。
 重要な点は,相続人全員が,遺産分割協議書に署名し,実印をもって押印しなければならないということです。もちろん,法務局に提出するときは,印鑑登録証明書も添付します。複数枚にわたるときは,契印をして,連続した文書になっていることを示す必要があります。

 困るのは,相続人が何十人もいるような場合です。
 署名を集めるにしても,人数が多くなれば,どこかで郵送忘れをしたり,紛失したりで,集めきれないことが考えられます。全員が近所に済んでいれば良いですが,北海道と沖縄に分かれているなど,遠隔地にいることも考えられます。
 そのような場合には,遺産分割協議証明書というものが使われています。
 これは,「これこれこういう内容で遺産分割したことを私たちが証明します」という内容のもので,実際には,ほとんど遺産分割協議書と異なりません。各相続人には,用紙に署名押印してもらい,最後に全部を集めて提出するというものです。
 正直,遺産分割協議書と,同証明書の違いは,ほとんどありません。ただ,違うものではあるので,どちらを使うべきか,相続人の数や所在を念頭におきながら考えましょう。

 次回は,その他の添付書類について書いて,終わる予定です。