一般的なケースについて,具体例を挙げて説明していきましょう。登場していただくのは,国民的な家族である,磯野家です(磯野家の家族関係が分からない方は検索サイトで「磯野家 家系図」と入力して調べてみてください。Googleでの検索結果はこちら。)
 なお,ここでは,話を簡単にするため,カツオくんとワカメちゃんは成人しているものと考えます。また,土地建物は波平さんの単独所有で登記されているものとします。

 父親の波平さんが亡くなって,遺産分割協議でフネさんが土地建物を単独相続したとします。
 このとき必要な戸籍謄本は,波平さんの出生から死亡までが記載された一続きの戸籍謄本と,フネさん,サザエさん,カツオくん,ワカメちゃんの戸籍謄本です。おそらく,必要な記載はすべてひとつの戸籍に収まっているので,取得すべき戸籍謄本は一通となります。だいたいの場合,そこに必要な情報がすべて記載されています。
 あとは,フネさん,サザエさん,カツオくん,ワカメちゃんが署名押印をした遺産分割協議書と,各人の印鑑登録証明書を揃えます。

 次に,父親の波平さんが亡くなって,相続登記をしないまま,フネさんも亡くなってしまった場合のことを考えてみます。
 このとき必要な戸籍謄本は,フネさんの死亡についても記載されるので,先ほど挙げた磯野家の戸籍謄本一通でよいように思うかもしれません。しかし,実際には,フネさんについても出生から死亡までが記載された一続きの戸籍謄本が必要になります。そのため,石田家におけるフネさんの戸籍謄本を取得しなければなりません。
 これは,登記官による審査が書面のみによって行われるためです。登記官は,戸籍謄本だけを見て,相続人の範囲を調べていきます。波平さんだけが亡くなったケースでは,相続人は「波平さんの配偶者」「波平さんの子」です。だいたいの場合,磯野家の戸籍謄本にすべての情報が記載されています。しかし,フネさんも亡くなったケースでは,「フネさんの配偶者」「フネさんの子」も相続人となります。配偶者は亡くなっているので,サザエさん,カツオくん,ワカメちゃんが相続人になり,波平さんだけが亡くなったケースと変わらないように見えます。しかし,「もしかするとフネさんには波平さんと結婚する前に子どもがいたかもしれない」という可能性があります。番組を観ている人たちは,いるわけないじゃん,と思うのですが,登記官は戸籍謄本しか見ていないので,いるかもしれない,と考えます。それを明らかにするため,フネさんが生まれたときからの一続きの戸籍謄本が必要になるわけです。

 このように,相続開始後,相続人の誰かが亡くなってしまった場合,その亡くなった人について,生まれてから死亡するまでの一続きの戸籍謄本が追加で必要となります。
 相続人が少なければ問題ないのですが,何十人という規模になってくると見落としやすいので,注意しておく必要があります。