写真を勝手に撮影した場合,何らかの民事上の責任が発生するのでしょうか。

 撮影者に対しては,不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をすることになります。
 ここで問題になるのは,はたして法律上保護された利益が侵害されたといえるのか,という点です。これを違法性という要件で判断するのか,権利侵害という要件で判断するのか,学説によって切り口は変わりますが,最終的に判断していることに変わりはなく,「勝手に写真を撮られないという法的な権利を認めるかどうか」です。

 写真撮影の場合,侵害されていると考えられるのは,被撮影者の人格権です。
 ところがこの人格権,概念としては立派に成立しているのですが,明文の根拠に乏しい権利です。そのため,どのような内容であるのか,いまひとつはっきりとしません。
 また,被撮影者のプライバシーの侵害ととらえることもできます。しかし,こちらも明文の根拠がないため,権利の内容は分かりにくいものになっています。

 これに関する著名な判例として,京都府学連デモ事件があります。

[su_quote cite=”最判昭和44年12月24日刑集23万12号1625頁” url=”http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/765/051765_hanrei.pdf”] ところで、憲法一三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているのであつて、これは、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。[/su_quote]

 この判断は,警察が行う任意捜査の限界との関係で示されたものですが,肖像権を認めた判例といわれています。また,和歌山ヒ素カレー中毒事件でも言及されています。

[su_quote cite=”最判平成17年11月10日民集59巻9号2428頁” url=”http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/388/052388_hanrei.pdf”] 人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁参照)。もっとも、人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。
 また、人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当であり、人の容ぼう等の撮影が違法と評価される場合には、その容ぼう等が撮影された写真を公表する行為は、被撮影者の上記人格的利益を侵害するものとして、違法性を有するものというべきである。[/su_quote]